楽しい時間は瞬く間に過ぎてチェックアウトの時間に。その後向かったのは、宿から車で5分ほどの距離にある、1919年創業の「別府つげ工芸」です。
「界」ではご当地色を重んじており、様々なおもてなしで旅人に貴重な経験を積ませてくれます。そのひとつが「手業のひととき」。地域の文化をつなぐ職人や作家、生産者の方から、技術や舞台裏を見せて頂く、大変貴重なおもてなしです。
「手業のひととき」でこの秋から冬にかけて開催されるのが、「別府つげ工芸」でのご当地体験。
「別府つげ工芸」に到着すると、レトロ可愛い建物に心くすぐられます。こちらでつくられているのが「別府つげ細工」であり、明治から昭和初期にかけて、別府が観光地として栄えた時代に人気を集めた土産品。つげは古来より絆を表す縁起ものとして、夫婦円満や家内安全のお守りとしても重宝されてきたそうです。
今回制作を見学させて頂いたのが「つげ櫛」、つまり髪の毛をとかすブラシですね。こちらは初代から引き継がれている独自の彫刻技術と、透かし彫りの技術を用いたつげ細工であり、かつて界隈に多かった芸子さんにも愛用されていたそうです。
材料となる薩摩柘植(つげ)の素材から、つげ櫛がつくられる様子を見学します。
作業は大きくわけて、丸太のまま送られてくる木を裁断し、板から型をつくってピンを刺していくという工程になります。
まずは土台の部分をつくる作業。素材を切り抜いたままだとガサガサとした手触りなので、ツルツルになるように、何度も何度も磨いていきます。作業は手や目の感覚によるものが大きいので、できるだけ均質になるようとても神経をつかうそう。
続いてはブラシの先になるピンをつくる作業を見学。カットの際は木目や木の性質などを見て判断しながらの、複雑な作業。最初は棒状のものを、きれいに整えて磨き、手触りや髪にあてた時の感覚まで心地良くなるように調整を重ねていきます。
最後はピンを一本一本、土台に刺していきます。湿気が多い時季は木がふくらむなど、季節や気候を見ながらの緻密な作業です。ちなみに工房に現在いらっしゃる職人さんは6人。すべての工程を担当できるマルチな方もいらっしゃるそうで、改めて技術に驚かされますね。
工程が複雑のため、1日頑張っても10本ほどしかつくれないというから、いかに貴重な工芸品であるかが分かります。
土産品売り場では様々な形状のブラシをはじめ、多彩な別府つげ細工が販売されています。
一つとして同じものはなく、旅のお土産はもちろん、大切な人への贈り物にも選びたい貴重なものですね。
幅広いタイプがあるので、ブラシを選ぶ際のポイントとしては、頭皮への当たり心地や髪質、髪の長さ、年代、利き手などに合わせて選ぶのが良いそうです。
気になるお手入れですが、湿気の少ないところに保管するのがおすすめ。ブラシには吟味に吟味を重ねた、食用にもなるほど純粋な椿油が塗りこまれています。そちらもあわせて購入をして、定期的に刷毛で塗ると艶が出てホコリなどが取れやすくなります。また万が一ピンが抜けるなどの破損があっても、工房へ連絡をすれば、メンテナンス対応をしてくれます(有料)。
頭皮のマッサージ効果もあるつげ櫛は、柘植の小さい木目から椿油が少しずつ出るとあって、髪のツヤツヤ効果があるそうです。また自然の木だからこそ木目は時間が経つと経験変化もあり、“自分だけの一本”になりますよ。
「界 別府」では、この一生もののブラシを作る体験も申し込むことができます。体験を申し込んだ方には、客室にはあらかじめ数本のブラシが用意され、実際に使って自分と相性の良いブラシを作ることができますよ。
【今回取材したホテル】
界 別府
大分県別府市北浜2-14-29
TEL 0570-073-011(界予約センター)
公式HP https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/kaibeppu/
客室数/70室
チェックイン/15:00 チェックアウト/12:00
料金/1泊2食32000円〜(2名1室利用時1名あたり・税・サービス料込み)
アクセス/JR別府駅より徒歩10分、大分空港より車で約60分
「別府つげ細工職人と行う一生モノのつげブラシ作り」
期間:2022年9月1日〜2023年2月28日(7日前までの要予約)
時間:チェックイン翌日11:30〜13:00
場所:別府つげ工芸 (大分県別府市松原町10-2)
料金:1名20,000円(税込み・宿泊費別)
※プランの種類により5,500円〜13,200円の追加料金が発生します。
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