現地で愛される骨太なイタリア料理に情熱を注ぐ、
真っ直ぐな潔さをもつ料理人。
食材の香りや味わい際立つ美味しさが、食べる者の心を打つ。
取材・文/三浦翠 撮影/勝村祐紀
本田剛さんが料理人へと進む道は、持ち前の直感と決断力で切り拓かれていった。大学進学の直前に、手に職をつけたいと思い調理師専門学校へ。卒業後は大阪のホテルに入り、その後もフレンチの店で修業をしていたが、当時はイタリア料理の大ブーム。東京で興味が湧いた一軒を「一度覗いてみよう」そう思った瞬間から、運命の舵は大きく切られた。
「一言でいえば、ハマったんですね。それまで学んだフレンチとアプローチや考え方がまるで違うのが面白くて」。師匠と仰ぐシェフとの出会いもあり、フィレンツェへ。だが、料理を学ぶ以前に突き当たったのが言葉の壁だった。「天気がいい、お腹空いた、給料が欲しい。そんなことも伝えられなくて、一度スイッチを入れ直しました」。時は2000年。今のような情報通信機器も発達しておらず、頼る日本人もいない。「国際電話で母に、イタリア語のラジオ講座の教材を送って欲しいと伝えました。限りある年数の中でできるだけ多くを詰め込みたかったので」。語学学校に在籍しながら店に通い、少しずつ意思を伝えられるようになり1年半が経った頃、次に働く店を探しに一人、シチリアへと行くことになる。
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