“福岡=豚骨ラーメンの聖地”というのは、もはや過去の話かもしれない。
今やつけ麺や担々麺の店にも行列が発生中だ。
取材・文/山田祐一郎 撮影/恵良範章
福岡における空前のつけ麺ブームが過ぎ去った2013年、この店は産声を挙げた。ブームの波に乗ることなく、静かに、だが着実に歩み、今や福岡随一のつけ麺の人気店と認知される。看板メニューのつけ麺は2種。基本は豚骨と鶏ガラ、香味野菜をじっくり煮出した濃厚なスープに魚粉を合わせたつけ汁で味わう。もう一つは激辛仕様で、魚粉に自家配合の唐辛子パウダーを加えたものがつけ汁の上に盛られる。共通で用いる関東の製麺所から取り寄せた中太ストレートの麺は、力強いコシ、噛みしめるたびに口中で花開く小麦の風味が特徴。店主・益成兼太郎さんが打ち出す「豪快で荒々しく、漢らしい一杯」というコンセプトがまさに形になったつけ麺は、食後、鮮明に記憶に焼きつく。2017年8月から1日30食限定で提供される油そばも定番メニューに加わった。
2012年に福岡空港のほど近くに広がる工場地帯の一角に店を構えた。それから5年が経ち、今ではランチタイムは満席続きの人気店だ。福岡では珍しい塩ラーメン専門店としてスタートを切り、その後、つけ麺、醤油ラーメンをメニューに加え、独自の進化を遂げている。その原動力は、店主・崎向善信さんが「客席を減らしてでも導入したかった」という製麺室。手もみのちぢれ麺、ストレートの細麺と中太麺という3種類の自家製麺を仕込み、それぞれのラーメンにマッチングさせる。スープと麺との一体感こそ、『シフク』の真骨頂だ。
オフィス街の一角という目立たない立地ながら、多い日には50人以上が並ぶ。その様子も今や昼時の風物詩で、当たり前の光景となった。開業は2012年。餃子と焼きめしという2つのサイドメニューを置くのみという生粋の豚骨ラーメン専門店だ。「ラーメン」は部位の異なる豚骨だけを徹底的に煮込んだ白濁スープが代名詞。スープを炊く際に生じる脂の泡をそのまま浮かべたビジュアルは“豚骨カプチーノ”の愛称で親しまれる。この泡をスープごと持ち上げるのが特注した平打ちの細麺。歯切れがよく、実に7割もの客が替玉を注文する。
福岡一、贅沢な担々麺かもしれない。水炊き専門店「とり田」が手掛ける担々麺専門店の一杯は、丸鶏からとった滋味豊かな水炊きスープがベース。一般的な担々麺は唐辛子やラー油による辛味、芝麻醤によるコクが前面に打ち出されているが、『とり田』のそれは出汁の存在感が強く、食べ終えた後の余韻が長い。ラー油は明太子のつけダレをイメージし、唐辛子数種を織り交ぜて旨味を持たせる。肉味噌はゴマサバから着想を得て味付けするほか、替玉(150円)にも対応するなど“博多担々麺”を謳うだけあり、随所にこの地らしい趣向が凝らしてある。
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