ここでしか味わえない、専門店のジビエ料理
豚・牛・鶏肉にはないコクと風味のジビエ料理。
福岡市内でも、料理人たちがその魅力を感知し、テクニックを磨いて日々チャレンジしている。
福岡のジビエといえばここ。
女性シェフ参入でさらにバージョンアップ!
3年前に、海外経験も豊富な小野貴史シェフが繰り出すジビエ料理の店としてオープンした西中洲の『カルネ』。この夏、女性のスーシェフ舟木慧さんが入り、メニューの幅が広がったと評判だ。「タカクラホテル」で10年以上経験を積み、国内外の料理コンクールでも入賞経験を持つ舟木さん。その腕を買われて"ハンティング"された。小柄な体に秘めた料理への情熱にますます拍車がかかる。
「しっかりした野生の風味を求める方と、食べやすい柔らかさを求める方。それぞれに応じられるよう、テクニックを磨くのも面白いです。ラグーやパテ・ド・カンパーニュには、モモや肩、首など部位を混ぜて食感も楽しめるようにしています。シカ肉のパイ包みは女性にも好評です」。今からの季節、赤ワインでじっくり煮込んだジビエも楽しみである。
幼い頃の食体験が原点、ニューオープンのジビエ店
店主の金子勝さんは、里山豊かな那珂川町育ちで、親戚が獲ったイノシシを味噌煮などでよく食べていた。「ただ、素人料理だけに"固い!"というイメージが強かったです。自分で出すならもっと美味しく作りたいと思っていました」
飲食業界に入ってからは、将来の独立を見据えて狩猟免許を取り、精肉店にも勤めて処理やさばき方を学んだ。
そしてこの夏、いよいよ自身の店を開業。昼間に自分で撃ってきたり知人から仕入れたイノシシやカモ、アナグマ、ヒヨドリなどを調理する。メニューには洋風に柔らかく煮込んだポトフや、自家製猪ソーセージ、コンフィ、燻製、山賊鍋など。ジビエによく合うドイツの蜂蜜ワインも、ぜひ味わってほしい。
ハンターならではの厳選の野性味を味わいたい
本誌(P50)でも紹介したオーナーの野村さんは、「福岡有害鳥獣対策猟友会」の代表でもある。30年近い狩猟キャリアだけに、仕留めた獲物の処理は完璧。肉の旨味を損なわないよう、最大限に引き出す。そのプロの味を求めて、博多座出演の歌舞伎俳優も訪れるなど、遠方からのお客も絶えない。
昔ながらの趣きあふれる博多町屋の店内でいただく料理は、猪のしゃぶしゃぶやエゾ鹿のユッケ、鹿の燻製、鴨のしゃぶしゃぶなど。値段も手ごろなのがうれしい。厨房では、野村さんの薫陶を受けた長男が腕を振るう。「捕獲状況もあるし、ちょうどいい熟成時間に合わせて提供したい」と野村さん。美味しくいただくためにも、3日以上前の予約が望ましい。
ソワニエ vol.46 2017年11・12月号より
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