|第十六回|
町田隼人 × お好み酒蔵
楽しかった日々のおかげで今の自分がある──。
故郷に心からの愛を叫べる人は、なぜだか眩しい。
取材・文/葉山巧 撮影/濱田陽守
地域の人たちに愛され、のびのび育った子供時代。
楽しかったあの日々が、今の自分を創ってくれた。
詩人の室生犀星は、「ふるさとは遠きにありて思ふもの そして悲しくうたふもの」と切なく詠んだ。けれども町田隼人さんは、この詩にやんわり異を唱えるだろう。なぜって故郷の朝倉は、「いつも
近くにありて、魅力をみんなに伝えたくなる場所」だから。
「幸あれーっす!」の縁起物ネタで知られる町田さんは、業界でも珍しい〝朝倉芸人〞。デビュー以来、朝倉のおじちゃんおばちゃんの物真似や、朝倉弁をいじり倒して人々を笑わせてきた。その集大成たるキャラクター〈朝倉幸男〉を考案したり、ラジオでも朝倉弁炸裂だったりと、とにかく隙あらば故郷を猛アピール。
なのに、どんなときも嫌味がない。むしろ「どれだけ朝倉が好きなの?」と、その愚直さと温かさについ頬が緩んでしまう。でも念のために確認しておこう。朝倉は好きですか?
「あ〜、もう愛してますっ‼」
聞くまでもなかった。となると、気になるのは郷土愛の原点だ。きっと恵まれた幼年期・少年期を過ごしたに違いない。
「私が生まれたとき、親だけでなく近所の方もすごく喜んでくださって、〈隼人会〉というのができたんですよ。毎月みんなで飲み会したり旅行したり……
私が朝倉を出たあとも続いてますけど(笑)。地域ぐるみで大事に育てられた子供時代でしたね」
一人っ子だったが、兄妹がわりの友達や同級生がたくさんいた。田んぼで缶蹴りし、塀を伝ってかくれんぼをしーー。「楽しかったあの日々が、今の町田隼人を創ってくれたと思ってます」
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