昨年開業した麺の店を振り返りつつ、そのトレンドをヌードルライターとして活躍する山田祐一郎さんが紐解く。
豚骨ラーメン一択という時代が長らく続いていた福岡だったが、近年、それ以外の選択肢が着実に地元の人々に受け入れられ、そして根付いてきている。
ラーメンという大きな括りの中で顕著だったのが、醤油、そして塩ラーメンの躍進だ。醤油と塩についてはこの数年、提供店が着実に増えていて、昨年はいよいよその流れが決定的になったように思う。
醤油ラーメンでは、関東のミシュランガイド掲載店で腕を磨いた店主が地元福岡に戻って開いた『地鶏ラーメン はや川』(本誌P30)、「博多一幸舎」グループで長年、屋台骨を支えた実力派職人が独立・開業した『中華そば 寿限無』(本誌P30)の2店舗が記憶に残っている。
また、塩ラーメンなら、替玉発祥の地・長浜において、あえて豚骨ラーメンを置かず、魚介による出汁を十二分に効かせた「麺食堂 歩ごころ」の一杯に心を掴まれた。
鶏白湯ラーメンにおいても、提供店がじわじわと増えている。渡辺通の『双鶏』(本誌P30)は豚骨ラーメンの人気店で修業を積んだ上で、あえて豚骨を封印し、独自の味を表現したいという思いから鶏白湯を追求。豚骨にこだわらないという、これからの福岡ラーメンにおける一つのあり方を見た気がした。
トレンドということであれば、辛い麺の動きも無視できない。すでに深夜に行列ができる店もあり、昨年は辛い麺をウリにした新店もちらほら。つけ麺専門店『つけ麺 tetsuji』(本誌P31)でも基本のつけ麺のほか、ピリ辛テイストのメニューを用意し、人気を博している。
と、ここまで豚骨以外のラーメンについて言及してきたが、無論、新規出店数の割合においては豚骨が圧倒的に勝る。福岡市内、そして郊外にも、注目店がオープン。面白いなと感じた動きとしては、豚骨ラーメン+チャンポンというスタイル。大名の『ひるとよる』(本誌P31)、六本松の「あずまや」がそれに該当する。いずれも地域密着の店で、週に何度も訪れる常連客にとって、選択肢が2つあるのは嬉しいポイントだろう。
豚骨以外の選択肢ができたことで、既存の豚骨ラーメン提供店にもこの流れが刺激となっているのだろうか。新店における豚骨ラーメン店が精鋭揃いだったのも印象的だ。
ラーメン以外で目立ったのがうどん。とりわけ「豊前裏打会」の動きが活発だった。 中央区に『萬田うどん』(本誌P32)、南区に『うどん 兎屋』(本誌P32)、郊外に「大地のうどん」の福津店が開業。 裏打会といっても店によってコンセプトは様々で、 カフェ風、地域密着の小バコ、 郊外系大バコというように多彩な顔ぶれ。「福岡麺通団」出身の店主が開業した『うどん こまる』(本誌P32)は讃岐系。博多うどんの聖地にどんどん新しい風が吹き込んでいくのを実感した。
住所:福岡市南区玉川町11-11
TEL:092-554-7474
営業時間:11:00〜15:00/18:00〜21:00※スープがなくなり次第閉店
定休日:水曜
席数:10席
メニュー:鶏と豚のつけめん850円、味玉トッピング100円
メニューは醤油ラーメンとつけめんの2本柱。いずれも地鶏の丸鶏を主体とした動物系、真昆布などから抽出した魚介系の出汁が土台となる。「地鶏醤油らーめん」の味の決め手となる醤油は糸島産など3種をブレンド。麺は修業先「らぁ麺 やまぐち」(東京)が京都の製麺所「麺屋棣鄂」と共同開発した特注品を合わせる。
鶏肉、豚肉によるチャーシュー2種、三つ葉、ネギ、穂先メンマとトッピングは至極シンプル。
住所:福岡市中央区高砂1-18-1
TEL:092-791-9685
営業時間:11:00~15:00/18:00〜21:00(日曜は11:00〜16:00)
定休日:月曜、第2日曜
席数:6席
メニュー:ちゃーしゅー麺1050円、味玉らーめん850円
客席はカウンターのみ。メニューも中華そば一本に絞るミニマルな新店だ。出汁は豚骨を白濁させることなく丁寧に炊いた清湯に、鶏ガラや魚介を合わせて味に深みを出す。この澄み切った出汁に醤油ベースの元ダレを加えたスープ、食べごたえのある中太ストレート麺のコンビネーションは、関東出身者も満悦必至だ。
福岡産など醤油3種で作る元ダレで味を整える。麺は通常の博多ラーメンの約1.5倍。
住所:福岡市中央区渡辺通2-8-26
TEL:092-716-1139
営業時間:11:00~15:00/18:00~OS翌2:00
定休日:日曜
席数:20席
メニュー:双鶏醤油ラーメン700円、台湾まぜそば(追い飯付き)750円
鶏ガラや手羽先などを白濁するまで炊き込んだスープで楽しむ昼の「鶏白湯ラーメン」、「とりかわ」をはじめとする幅広いネタがオール110円で満喫できる夜の「焼鳥」が二枚看板。清湯スープの「醤油ラーメン」、V字型の形状が斬新な「麺屋 棣鄂」の麺で味わう「台湾まぜそば」など、夜限定の麺料理も好評だ。
とろっと濃厚なスープが信条。夜はハーフ(530円)でも提供する。麺は「麺屋 棣鄂」へ特注。
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