第二十五回
目の前に海を望む港町らしい眺望と、エキゾチックな異国情緒にあふれた町並み。
全国でも有数の観光都市・長崎市は今、西九州新幹線の開業に沸いている。
今回はぜひとも訪れたい定番の観光スポットをはじめ、新しいカフェから老舗の名物グルメまでを紹介。
長崎ならではの店や人に出会いに行こう。
取材・文/江月義憲 撮影/松隈直樹・川﨑一徳
戦国時代末期の1571年に開港して以来、江戸時代を通じて唯一の海外との窓口として大いに栄えた長崎の街。ヨーロッパや中国から運ばれてくる珍しい文物や当時の最新技術、さらに食や芸術などがもたらされ、わが国の中でも独自の文化を育んできた。幕末には坂本龍馬をはじめとする志士たちが闊歩して維新を成し遂げ、明治以降は造船業などで日本の近代化を支えてきた歴史もあり、あちこちに見どころが満載だ。
そして、いよいよ9月23日からJR九州の西九州新幹線が開業。博多駅〜長崎駅間を「特急リレーかもめ」と「新幹線かもめ」で、従来より約30分早い最速1時間20分で運行されるようになる。福岡からより身近になり、日帰り旅の楽しみ方も広がりそうだ。
港町ならではの眺望と異国情緒を満喫
「大波止」と呼ばれる長崎港のベイエリアに整備された長崎を代表する観光スポット。海に面してカフェやレストランなどが建ち並び、港越しに稲佐山や女神大橋などの景色を眺めながらテラス席でくつろげる。その中ほどにある『ATTIC COFFEE second』は、巨大な焙煎機を備えた本格的なコーヒーショップ。昼間のカフェ使いをはじめ、夜景を見ながらワインやカクテルを楽しむこともできる。目の前のターミナルからは軍艦島や夕景を眺める1~2時間程度のクルーズ船も出ているので、時間があればぜひ体験したい。
創業は明治29年。花街として栄えた丸山町の料亭として誕生し、戦後思案橋近くに移転して現在まで女将の白倉智恵子さんが暖簾を守っている。「牛かん」や「豚の角煮」などの郷土料理も食べられるが、この店の看板メニューは白倉さんの父親である先代が考案したという「おじや」だ。丼いっぱいに敷きつめられた白ゴマとネギの美しいコントラストの下に、ふっくらと炊かれたおじやが潜んでいる。そっとレンゲですくって口に運ぶと出汁の香りと卵の甘みが広がり、何ともお腹にやさしい味わい。旅の疲れを身体の中から癒してくれる。