週末日帰り旅のススメ
大人の遠足
第二十一回
古来より神と仏の里として、
独自の信仰文化が息づいてきた国東半島。
神社仏閣が点在する山深い地には厳かな雰囲気が漂い、
神秘的な空気に惹かれて移住する作家やアーティストも少なくない。
今回は豊かな自然に寄り添う“アート”に注目しながら、
この半島の魅力に触れてみたい。
取材・文/三浦翠 撮影/紅葉谷昌代
神仏習合の発祥の地とされる国東半島には風光明媚な景色が広がり、豊かな自然とともに歴史を紡いできた。この地で活動する多くの作家たちに加え、〝芸術の地”としての存在をさらに色濃くしたのが、2014年の国東半島芸術祭。芸術祭を皮切りに国東市と豊後高田市には、世界で活躍する著名なアーティストの作品が設置されてきた。
今回の遠足では、昨年3月にお目見えした作品を中心に、半島をぐるりと一周。アートや芸術というと少々堅く聞こえるかもしれないが、いずれの作品も国東半島の風土や自然から着想を得ている。のんびりドライブしながら寄り道をしても構わない。気に入った景色があれば、時間を気にせずぼんやりして欲しい。日常では出逢えない風景が五感にやさしく響くはずだ。
光や海、木々の美しさとアートの共鳴を、五感で感じてみて。
そもそも自然は刻一刻と姿や形を変える不均質なものであり、すべてが一瞬しか出逢えない風景だからこそ感動をもたらしてくれる。そんな思いをもとに、テクノロジーを生かして変化する長崎鼻の自然と触れ合うことができる美術館。
大分におけるインドカレーのパイオニアと、風情あふれる古民家を愉しむ。
オーナーの瀬口彰治さんは、カレーの道に飛び込み50年近くになる熟練。「東京のインドカレー専門店で働きながら、店が終わるとインド出身のシェフの家へ遊びに行っていたんです。そこで本場の家庭のカレーを学びました」。つまりベースになっているのは、リアルなインドの家庭料理。ごくシンプルな種類に抑えているスパイスは、配合や加えるタイミングこそ重んじるべきところ。鼻から抜けるスパイスの豊かな風味と舌に心地よい旨み、後に残る複雑な香りのどれもが秀逸で、本場の味でありながら日本人が率直に美味しいと感じられる瀬口ワールドを体感したい。