第四十回
日本一の干潟面積を誇る有明海に、佐賀県最高峰の多良岳山系と、豊かな海と山に抱かれた鹿島市と太良町。
山海の幸や美しい景色に、心ときめく旅を始めよう。
取材・文/瀨下和歌子 撮影/中西ゆき乃
鹿島市といえば、「祐徳稲荷神社」をまずは思い浮かべる人が多いだろう。その最寄り駅である「JR肥前浜駅」近くは、江戸時代に栄えた宿場町の面影が残る歴史を感じるスポット。特に白壁の建物が連なる酒蔵通りは見応えがある。周辺では5つの酒蔵が昔ながらの日本酒造りを継いでおり、昨年12月の日本の「伝統的酒造り」ユネスコ無形文化遺産登録に沸いている。
また、鹿島市と太良町といえば、穏やかで栄養豊富な有明海で育まれる海産物も欠かせない。中でも「竹崎カニ」は3〜4月がまさに旬。太良町では日本一の干満差を生かした海苔や「竹崎カキ」の養殖も盛んだ。
船が行き交う朝に、満潮で海に沈む「大魚神社の海中鳥居」と、刻々と移り変わる海景を前に、旅愁に浸る時間もいい。
新しい試みに挑戦する、名酒蔵のカフェや老舗漬物蔵へ。
「JR肥前浜駅」そばにある築100年以上の漬物蔵で、太い梁に支えられた広々とした空間が訪れる者を圧倒する。昔は奈良漬けや粕漬けをメインに製造していたが、今は74歳の社長・田雛継市郎さんのもと、代表の北御門裕一さんたち若手メンバーを中心に、新商品の開発や各種体験など新しい取り組みを行っている。中でも、旬の地元野菜で作る「百年ピクルス」は今や蔵の看板商品に。購入はもちろん、ワークショップも好評だ。また、蔵の空間を生かした音楽やアートのイベントも不定期で開催している。
列車に乗らずとも立ち寄りたい、郷愁誘う駅へ。
昨年公開された映画のロケ地として話題を集めている『JR肥前七浦駅』。90年以上の歴史を刻んできた木造の駅舎には、休憩スペースが設けられ、地域の駅守会によって季節の花が生けられている。おばあちゃんの家のような温かさで和ませてくれる、ほっとする駅だ。