味なプチ旅AJI na puchi TABI

週末日帰り旅のススメ 味なプチ旅

第三十三回

大分県 由布院

言わずと知れた九州を代表する観光地・由布院は、車がなくとも充実した旅が叶う、コンパクトな街。
今だけの美しい景色を楽しみながら、食べ歩きや温泉巡りに興じてみてはいかが。

取材・文/淺原麻希 撮影/目野つぐみ、鍋田広一

櫟の丘
「櫟の丘」では、由布院の壮大な自然を眺めながら食事ができる席を用意。テラス席のほか、暖房のきいた室内での食事も可能。

今回は、日本人だけでなく、海外の観光客をも魅了する温泉地・由布院へ。どこを切り取っても絵になる美しい自然にはじまり、全国屈指の湧出量と源泉数を誇る温泉、豊かな風土から生まれた食材を生かす食事処など、何度も足を運びたくなる魅力で溢れている。
福岡からは車だけでなく、JR九州の観光列車を利用して訪れる人も多いことから、今回は由布院駅を旅の起点に設定。徒歩移動が可能な範囲だけでも、美味しい旅が十分叶うコンパクトさも由布院の良さだ。気になる小道があれば、ふらりと寄り道してもいい。雪化粧をまとった由布岳や、幻想的な朝霧、もうもうと立ち上る湯けむりなど、今しか出合えない情景が、旅をより思い出深いものにしてくれるだろう。最後は温泉で冷えた身体を温めて、冬の由布院旅を締めくくりたい。

わざわざ行きたい名店

お腹だけでなく、心も満たしてくれる2軒をピックアップ

櫟の丘 住所:大分県由布市湯布院町川北93-1 電話番号:0977-85-4007 営業時間:11:00~OS14:30/17:30〜OS20:00 定休日:水曜(祝日の場合営業) 席数:100席 クレジットカード:不可 QRコード決済:不可 喫煙:禁煙 駐車場:60台 
マルゲリータ1785円、自家製ベーコンのソテー1100円、野菜のサラダ960円

オーナーの山﨑康成さんが目指したのは、由布院の自然を身近に感じられる場所。のどかな景色を眺めながら、鳥のさえずりや心地よい風を楽しめる場所で寛いでほしいと、由布院盆地を一望できる高台に店を構えた。
オープンから今年で20年。今や行列必至の人気店となった『櫟の丘』は、日々の喧騒から離れて過ごしたいという都心部からの客が多い。遠方からわざわざ足を運ぶのは空間だけでなく、地元野菜や自家製ベーコンなどをのせた石窯ピッツァ、もっちり食感の生パスタ、ワインやハーブに一晩漬け込んだスペアリブなど、手の込んだイタリアンが食べられるのも大きな理由だ。美味しい料理と、非日常へ誘う自然豊かなロケーション。その両方が一度に堪能できる、由布院のなかでも貴重なスポットといえるだろう。

「マルゲリータブファラとクアトロフォルマッジ」のハーフ&ハーフ(2645円)。
内装の一部は、廃材や大木などを活用し、山﨑さんやスタッフらでDIY。
「オマール海老を使った濃厚トマトクリーム生スパゲッティ」(5450円)。
「スペアリブの石窯焼き」(4本・1850円)。

静かな時が流れる
ギャラリー&カフェへ

旅館「山荘わらび野」が手がける話題のニュースポットは、地元の人たちも集う、日常に寄り添った空間だ

ある風景 住所:大分県由布市湯布院町川北1265-1 電話番号:0977-75-8140 営業時間:11:00~17:00 定休日:火~木曜 席数:9席 クレジットカード:可 QRコード決済:一部可 喫煙:禁煙 駐車場:5台
豊後牛カレー1000円、本日のコーヒー550円、チャイ550円

由布院の中心地から少し車を走らせると、長閑な風景が広がる川北エリアにたどり着く。そこで静かに佇むのが、昨年4月にオープンした『ある風景』だ。元々は、旅館「山荘わらび野」のオーナー・髙田淳平さんが幼い頃に住んでいた場所で、長い間、倉庫として使われていたが、コロナ禍に入ったタイミングで改装に着手。髙田さんを中心に、旅館のスタッフらも加わり、少しずつ手を加えながら現在のギャラリー&カフェを完成させた。1階のカフェスペースは、窓の向こうの穏やかな景色を見ながら寛げる、癒やしの空間。2階はギャラリースペースとなっており、洋服や器などの展示・販売を行っている。気さくなスタッフとの距離感も心地よく、ゆるりと幸せな時間に心が満たされていくようだ。

❶柔らかな陽の光が差し込むカフェスペース。テーブルは4卓あり、一人でもゆったり過ごせる。❷「豊後牛と豊後豚の煮込みハンバーグ」(1200円)。❸姉妹店「CARANDONEL」のカヌレ(350円~)と「ハーブティー」(550円)。❹❺2階のギャラリーでは、肌触りのいい「saraxjiji(サラジジ)」の洋服などが並ぶ。