週末日帰り旅のススメ
大人の遠足
第二十回
言わずと知れた人気観光地・糸島には、
玄界灘に囲まれた絶好の漁場が広がるのも大きな特徴。
その日の朝に水揚げされたばかりの地魚と腕利きの料理人…
ランチから手土産まで、きっと〝美味しい旅〞ができること請け合いだ。
取材・文/三浦翠 撮影/武井メグミ
ダイナミックな海岸線や新鮮な食材など、尽きることない魅力をもつ糸島。県外からの移住者も多く、全国的にも圧倒的な人気を誇る。玄界灘が広がるこの地域は地魚も豊富で、実は天然真鯛の水揚げ量は8年連続日本一。ほかにも年間で色んな魚が旬を迎えるが、基本的には水揚げ後、漁港の近くに位置する糸島漁協の各支所からトラックで運ばれるため、鮮度は保たれたまま。それらは福岡市内の市場のほか糸島の直売所にも出荷されるとあり、まさに〝朝獲れ直送〞だ。なかには活魚もあったり、漁師自らが鮮度を保つために神経締めを施していたりと、こだわりは尽きない。直売所に並ぶ魚介は、朝から料理人の争奪戦でもある。そうとくればあの店でのランチも、さらに期待が高まるはず。
開け放った窓から届く潮の香り。糸島の土地が育む美食を味わう。
ヘリンボーンのフローリングやタイルが描くのは北欧の世界観。窓の外にはテラスや野趣あふれる草原、そして海が広がりリゾート気分を高めてくれる。
料理長・谷口正直氏による料理はイタリアンとフレンチの要素を合わせたもの。毎朝産直所をまわって仕入れる魚介、「野菜やトラキ」の有機野菜や「高倉農園」の生姜など、厳選した素材とそれを慈しむ心から構成される。味付けはシンプルで優しいが巧み。オリジナルのフレーバーを施した塩や伊都國地鶏の親鳥でひいた出汁など、一皿ごとに繊細な風味や香りを調整し、風景や時間を壊さないような柔らかい味わいに昇華させている。
趣を感じる休憩スポットで寛いだ後は、情熱の酒屋へ。
かつて唐津街道の宿場町として栄えていた糸島の中心地で富を築いた豪商・西原家。往時の繁栄を思わせる建物や庭園は、隅々にまで情緒を感じさせる。運営するのは建築物の解体を主とする会社。「ここを取り壊す依頼が来た時、当時の社長が空間の素晴らしさに感動して保存を決めたそうです」とディレクターの有田和樹さん。建具や窓ガラスなどは各地の古民家のものも活かされており、見応えたっぷりだ。常駐するパティシエがオーストリアでの経験をもとに作る焼き菓子は厳選した素材を用いた心和む味わい。コワーキングスペースとしても開放されているので、思い思いの時間を過ごしたい。