いにしえより伝わる鬼の物語に誘われて
国東半島の夷(えびす)谷を分かつようにそびえる『中山仙境』は、火山活動によって生まれたひときわ不規則な地形が特徴的。中心には尾根道が延び、足がすくむような荒々しさを見せる岩峰には、かつて鬼が棲むと言い伝えられていた。一般的に恐ろしさの象徴とされる鬼。だが、くにさきの鬼は不思議な法力をもつとされ、岩峰で修行をする僧侶はいつしか鬼を仏(不動明王)と重ねるようになった。
人々が鬼に出合えるくにさき最大の法会が「修正鬼会(しゅじょうおにえ)」だ。鬼が松明で人々の尻や肩を叩くことで、五穀豊穣や無病息災などの幸せを届けてくれるとされている。この「鬼が仏になった里『くにさき』」のストーリーが、2018年文化庁の「日本遺産」に認定。岩峰につくられた寺院や岩屋を巡り、鬼や不動明王を探してみよう。鬼に祈りを捧げる旅が、ここに待っている。
※修正鬼会=豊後高田市の「天念寺」で毎年、国東市の「成佛寺」と「岩戸寺」で隔年交代で行われている国東半島最大の法会。
30カ所ほどの霊場を巡っていく『中山仙境』は、まさに修行の地。コース最大の山場は「無明橋(むみょうばし)」で、幅40cm、長さ3.5m ほどの石橋から絶壁を見下ろす。難所も多いが秀麗な峰々の景観は圧巻だ。
中山仙境
住所:大分県豊後高田市夷 電話番号:0978-22-3100(豊後高田市 商工観光課)
※国東半島峯道ロングトレイルのコースにも指定。トレイルをする場合は「夷耶馬農村公園」帰着 駐車場:あり
長岩屋山 天念寺
住所:大分県豊後高田市長岩屋1152 電話番号:0978-27-3049(鬼会の里) 営業時間:9:00~17:00 定休日:なし 駐車場:あり
ガザミ養殖プロジェクト
火山活動によって形成された半島は、山海豊かで農業や漁業が盛んに行われてきた。
ガザミも特産の一つだが、近年の漁獲量の減少を機に、
全国でも稀有な養殖への取り組みがスタート。
かつて両子火山の噴出物によりできた国東半島。尾根と深い谷からなるこの地は山と海の距離も近く、山から流れ出すミネラルたっぷりの水が良質な海を育んできた。栄養豊富な海は昔からの好漁場であり『中山仙境』のある香々地谷で名産として食べられてきたのがガザミだ。ガザミとはワタリガニのことで、カニ本来の濃厚な旨みや歯ごたえを持つのが特徴。真っ赤なガザミを使った料理は、まさに鬼の幸で、香々地谷でも昔から焼いたり湯がいたりして味わってきた。
しかし近年、水温の上昇や藻場の減少といった環境の変化で漁獲量は減少。そこで2年前から県や豊後高田市、漁協などが取り組んできたのが養殖だ。
カニの養殖は技術的に難しくコストもかかるため、全国でも成功例がないのが現状。少しでも早いサイクルで質の良い商品を育てるため試行錯誤の繰り返しだが、市内の養殖場では稚ガニを育て、2023年からふるさと納税の返礼品として出荷するなど、少しずつ手応えを感じている。天然のガザミに少しでも近い品質を育てることを目標に、挑戦は続く。
※ガザミは現在養殖中のため、商品の販売時期は未定。ふるさと納税の詳細や養殖の進捗については、インスタグラムで確認を。
日本遺産、探訪
神秘的な空気に包まれ、様々な表情の鬼や不動明王が待つ遺産を巡ろう。
熊野磨崖仏 (くまのまがいぶつ)
国指定の重要文化財に指定されている『熊野磨崖仏』。鬼が一晩で積んだと伝わる九十九段の石段を上れば、その先に現れる磨崖仏と森が生み出すダイナミックな情景に誰もが思わず息をのむ。引き締まった表情の「大日如来」は約7メートル、微笑んでいるかのような「不動明王」は約8メートルと、その大きさは国内最大級。また、平安時代に築かれた「大日如来」は、大分県最古の磨崖仏としても知られる。
住所:大分県豊後高田市田染平野2546-3 電話番号:0978-26-2070(熊野磨崖仏案内所) 営業時間:8:00~16:30(4~10月は~17:00)
駐車場:あり 拝観料:300円(小・中学生150円)
足曳山 両子寺(ふたごじ)
六郷満山の総持院『両子寺』は、国東半島のほぼ中央に位置する。奥の院に祀られている「十一面千手観音菩薩」が本尊で、傍らに鎮座する双子の神様「両所大権現」が名の由来と伝わる。その「子授け」の霊験にあやかる「申し子祈願」には全国から祈願者が訪れるそう。また、「全国森林浴の森百選」に選ばれている境内の美しい自然や、国東半島随一の大きさと優美さを誇る仁王像も見所の一つ。
住所:大分県国東市安岐町両子1548 電話番号:0978-65-0253 営業時間:8:00~17:00
※講堂・奥の院は~16:00(12~2月は8:30~16:30) 定休日:なし 駐車場:あり 拝観料:300円 ※各種祈願は予約推奨
峨眉山 文殊仙寺(もんじゅせんじ)
標高616メートル、静寂に包まれた深緑の森にひっそりと佇む『文殊仙寺』。“ 三人寄れば文殊の知恵”で知られる日本三文殊の一つで、秘仏本尊「文殊師利菩薩」は12年に一度しか開帳されない。また、全国的にも珍しい木彫りの「鬼大師坐像」も祀られている。不眠不休で疫病や飢饉を沈め、鬼の姿になったと伝わる慈恵大師良源を模した像で、護摩祈願などの際に拝顔することができる。
住所:大分県国東市国東町大恩寺2432 電話番号:0978-74-0820 営業時間:9:00~16:30
定休日:なし 駐車場:あり ※各種祈願は要予約
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